日々雑論 [秋葉原無差別殺傷事件][トヨタ][キャノン] 蟻地獄に足を入れ始めた大企業

 こちらのboiledema様のエントリを見て思った。
 これはただの予言に過ぎないのだが、遠からずトヨタをはじめとする日本の大企業は恐らく没落します。まあ、永遠に栄えるものはないんだけどね。
 国内では派遣労働者や研修生制度などで「労働力」を安く買い叩き、組合は所詮御用組合、末端への還元を可能な限り少なくして企業自体の体力を回復しようとするやり方は少なくとも一時的なカンフル剤にはなっても長期的な強化には程遠い。
 今回の秋葉原無差別殺人事件は、「彼」に関しては前のエントリでも考えてみて、まだあれ以外の結論が出ていないので言及は避けるが、今回は前にも言及した「大企業」の雇用方式を考えてみたいなと。
 「ベトナム人研修生のトヨタ下請け事件」は知っているかと思う。前にも一度取り上げた
その後、皆さん受け入れ先が決まったようで何よりです。で、問題は「トヨタ」のやり口だ。ベトナム人研修生受け入れを打ち切り、100人ほどの研修生を文字通り「切って」しまったのだ。
 企業にすれば「負担や問題」は外科手術のように「切って」しまえばそれで終わりである。研修生は他から大人しいのを探せばいい。という発想なのだろう。更に保障などで縛られていないためいつでも「切れる」派遣も有難いに違いない。
 ただ、フルオートで感情無しに行えるロボットでもない以上、上に対する信頼がなければサボタージュ等いろいろな事態が多発して当然ではなかろうか。
 恐らくこれからは「人件費」や天井知らずで値上がるエネルギーなどによる「物資調達能力」などの理由で大企業は「海外」へ生産拠点を移すだろう。
 ただ、その「海外」でも既に軋轢が慢性化している。
 またトヨタの例を挙げるが、「北米トヨタ」社長がセクハラ問題により敗訴になったのは覚えておられるだろう。そのときのトヨタの対応は非常に素早かった記憶があるが、次に挙げる問題は足掛け7年、未だに解決しておらずますまし泥沼に入り込む気配だ。
 フィリピントヨタ労働問題である。
 前、ベトナム人留学生事件を取り上げたときにちょこっとだけ触れたが、改めてもう一度詳しく見てみる。以下、フィリピントヨタ労組を支援する会HPより一部抜粋

組合承認選挙に会社が介入
 フィリピン・トヨタ労組(TMPCWA)は、1998年4月に、独立組合として労働雇用省に登録された。2000年3月、労働協約を結ぶ労使協議(CBA)を行う権利を得るために「組合承認選挙」(CE)が行われた。
 記名投票の結果、賛成は500票を超え投票数943票の過半数を制した。
 しかし、トヨタは、課長クラスの105票が含まれていないとして異議を申し立て、労使協議を開始しなかった。

組合勝利の長官裁定が出された日に大量解雇
 会社側の異議は、労働仲裁官、労働次官のいずれの段階でも却下され、2001年3月16日、ついに、労働雇用省長官の裁定で組合の勝利が確定した。まさにその日、トヨタは組合員227名を解雇(その後233名に)、70名を停職処分した。
 理由は、労働雇用省の公聴会の山場に、組合員317人が参加したが、これが「無断欠勤」にあたるというものだった。

ピケからストへ工場が止まった2週間
 組合は、工場前でピケを張り、3月28日からは、約700人が解雇撤回を求めてストライキに突入、工場はストップした。トヨタは、スト破りの導入をはかったり、アロヨ大統領に会って、争議が長引くなら投資を引き上げる、と圧力をかけたりした。さらに、トヨタを含む日系11社が労働雇用省や貿易産業省に、「争議が解決しなければ投資を引き上げる」とねじ込んだと一斉に報道された。労働雇用省長官が仲裁に乗り出し、ストは停止された。
 この時に、組合員による「重大な威圧行為」(にらみつけた、とか大声を出したとか)が行われたとして、後に26名の組合員が刑事告訴された。

来日闘争、激励団派遣、物販で支援
 2001年4月、組合のエド委員長が初来日、日本の労働者とともにトヨタ東京本社へ抗議と申し入れを行った。以降、日本のトヨタへの抗議、現地激励団の派遣、組合員の生活を支えるための「マルチプロジェクト」立ち上げ、物品販売と、フィリピンと日本の連帯した闘いでトヨタにいどみ続けている。
 会社の組合否認・団体交渉拒否について、フィリピンの最高裁が、組合勝利の判決。ILO「結社の自由委員会」も勧告を出しているが、それでも会社は、法秩序を無視して、いまだに団体交渉にすら応じていない。

足掛け7年、既にフィリピン最高裁では違憲判決が出されており、ILO、IMFまでがトヨタに対し勧告を行っているにもかかわらず、トヨタはこれを無視。現地で御用組合を組織して対抗勢力を潰そうと躍起になっている。国内では比較的円滑に組合との交渉が進んでいるにもかかわらず、海外ではこのような事態に陥っている。更に、これから国内での生産を縮小してゆくとなれば余計に海外の労働問題と直面しなければならないのだ。 
恐らく、このような事態を改めない限り、歯が一本一本抜けてゆくように徐々に大企業の体力は削られていくだろう。
 一連の流れを見ていて感じる事は、「戦前、戦中と全く発想が変わっていない」という事だ。「生産性があがらなければ『労働力』を交換すればいい」という発想である。勿論ここでは「彼」の行為について述べているわけではないので「彼」についてはここでは触れない。ただ、「派遣労働」が根っこに抱える問題は「トヨタ」に限った事ではないと思うのだ。これは「トヨタ」を断罪すればそれでよし、ではなく「大企業」全てに言える事なのではないのだろうか?
【追記】2008/06/13 21:11
キャノンで、過労と「見えない残業」によって自殺した研究員の方に「労災」認定がおりたとの事です。以下、毎日新聞より全文抜粋

キヤノンの研究所「富士裾野リサーチパーク」(静岡県裾野市)に勤務していた男性社員(当時37歳)が自殺したのは、仕事による過労が原因だとして、沼津労働基準監督署が労災認定していたことが分かった。男性は自宅に仕事を持ち帰るなどして月に200時間を超える残業をしていたという。遺族側代理人川人博弁護士は「日本経団連のトップが会長を務める企業で過労自殺が起きたのは深刻」と指摘している。

 川人弁護士らによると、男性は1992年に研究職でキヤノンに入社し、2000年からリサーチパークに勤務。05年4月、経験の乏しい分野に異動になり、06年11月に静岡県内の踏切で投身自殺した。

 リサーチパークでは午後10時までしか残業できないことになっており、男性は帰宅後、自宅のパソコンで仕事をしていた。代理人らがパソコンの履歴を調べると、亡くなる直前の1カ月は263時間、それ以前も200時間近い残業があり、54日間連続して働いていたことも分かった。仕事へのストレスや長時間労働の実態などから、労災が認められたとみられる。

 3人の子供を抱える妻(34)は「キヤノンでは残業が慢性化していた。主人のつらさ、苦しさを理解していただきホッとした」と話した。キヤノン広報部は「労災認定を厳粛に受け止め、誠意を持って対処したい」とのコメントを出した。

 一方、沼津労基署は当初、代理人や遺族が求めた認定理由の説明を拒否した。厚生労働省は、労災決定の際は納得のいく説明をするよう指導しており、再度の要請に同労基署は「判断が間違っていた。遺族、代理人には納得のいく説明をする」と誤りを認めた。【東海林智】

世界に冠たる大企業でこの有様です。しかもキャノン会長は経団連の会長職である。大企業は徐々に足元を侵食しているのではないか?