日々雑論[近代東洋史][半島問題] 半島の文化と旧軍の文化破壊

 最近ちといわゆる「マイブーム」なるものがありまして…つってもただの漫画なんですが、「王様の仕立て屋」が面白い。
 簡単に言ってしまうと仕立て屋さん版「ブラックジャック」なんだけど、普段てきとーに安い中国製の大量生産品で済ませている人間にとっちゃまさしく「目から鱗」な訳で。「粋」と「エレガンテ」の違いもまぁ、なんとなく判ったような判らんような(笑) 
 本当ならそこから更に突っ込んで衣服の歴史や民俗学なんかにも手を出したいところだが、如何せんまだまだそこまでの余裕がこっちに全くないもんで取りあえず手軽に漫画で追っかけます。大杉栄なんかに手を出したのも元はと言えば、ちっちゃい時に読んだかわぐちかいじの「テロルの系譜」*1からだしね(笑)
 まぁ、それにしても郊外大型書店の酷さは目に余りあるが、岩波新書が「たった」1冊しかないと言うのは流石に驚いた訳で。しかも「現代の貧困ルポルタージュ」の本だったから、まず「確実に売れてる物」だけ置いてるんだなぁと物悲しくなってしまった。
 貧困関係で松原岩五郎の「最暗黒の東京」とか、その辺も関連付けて並べればいいのに、と思ってしまったがそれは部外者の野暮な発想という事で。

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)

最暗黒の東京 (岩波文庫)

最暗黒の東京 (岩波文庫)

 それはさておき
 よくある馬鹿な展開で、「韓国に文化は存在しない」と本気で信じている愚か者をそれこそよく見かけるんですが、今回はちとそれについて首を突っ込んでみようかと。
 いわゆるこっちが本題ですな。 
 何度も繰り返すのも面倒くさくて事なんだが、明治政府が立ち上がったときに鎖国状態だった李朝を強引に開国させたのは他ならぬ明治政府な訳で、そのやり口も散々述べてる通りなんだけど、政府御用商人である三井なんかをけしかけて、半島への密貿易を奨励し、地元の経済を滅茶苦茶にしてわざと矛を向けさせてから大砲と近代兵装でねじ伏せると言う、言ってみればこれから延々と繰り返されるやり方を最初に踏んだ訳だな。
 阿呆なウヨ共が引き合いに出す「通州事件」にしたってその「下地」として「何をどうやっても」法幣に勝てない軍票に業を煮やした上層部が「最後の手段」として密貿易を奨励し、地元の経済基盤を非合法且つ目茶苦茶にぶっ壊して付近住民の徹底的な恨みを買ったのが引鉄だし、その前に義和団事件で旧軍による略奪犯殺行為が実際にこの界隈で既に行われていた「前例」があった訳だしね。
 で、「半島には文化が無い」とかほざいている方々は、「旧軍」が「半島の民族文化」を徹底的に破壊した、もしくは根絶しようとしたという事を前提に話をしているのでしょうか? 前提にしていなければ無知の極みとしか言いようが無いし、前提にしているのであれば極悪傲慢の極みとしか言いようが無い。 
 まぁ、毎度おなじみのネタなので、まずは義兵闘争関連という事でF・A・マッケンジー「朝鮮の悲劇」から引用するが、そこんとこ宜しく。例に酔って太字赤字はこっちで加工

「私達は自分の家を建て直しています。だがそんなことをしても何の益がありましょう。私は家族の一員です。父祖代々の記録があったのに、その我が家の記録が焼き払われてしまったのです。だから、私達は名前の無い、恥辱に満ちた、無宿者になってしまったのです。

加えてもう一つ

「そういって彼らは、家から家へにとやって来て、欲しいものは取り上げ、そしてみんな燃してしまいました。一人の老人―その老人は母親が赤ん坊に乳を飲ませていたので、家にいたのですが―は、日本軍の一人が家を焼いているのを見て、その膝に齧りつき、泣きながら言った。『どうか家を焼かないで下さい。私はここで死ぬのですから。それを残しておいてください。私はもう年寄りでまもなく死ぬんですから』と」

こうやって見ていくと、まぁ、旧軍の鬼畜振りが目に付くのは第一だが、ここだけを抜き出して読んだだけでも興味深い事が判ってくるかと思うのだ。

  1. 半島の民族文化として、「家」そのものが「歴史」「文化」として代々受け継がれ存在していた事。
  2. 各々の「家」は「ただの財産」「居住目的としての機能」を果たしていただけではなく「その地方地方の受け持つ文化及び民俗史そのもの」であった事
  3. その貴重な「民俗文化」を「旧軍」は徹底的に破壊しつくしてしまった事。

 理解しようとすらしない屑ウヨ連中にも判りやすいように言ってやる。
 白川郷の合掌村なんかの、実際に今、人が住んでいる貴重な民俗資料として存在していた物を燃やしつくした、つー事だ。しかも、代々受け継がれており、「民俗文化」として申し分ない数々の貴重な文化遺産を破壊しつくして廻った、つー事だな。
 更に加えて、この文面から「先祖代々受け継いだ家を守り抜く事」が「文化」である、と読み取れるため、文字通り旧軍は家々を焼き払うと言う行為で「保護されるべき民俗文化遺産」を「根こそぎ」破壊しつくした訳だ。 
 日本の民俗文化といえば柳田民俗学がまず挙げられるが、柳田民俗学の根っこは実際の土地者に対して様々な調査を多面的に行い、これまで知られていなかった庶民の土着文化に光を当てたものだった、と俺は解釈している。
 日本軍は「半島の土着民俗文化」を文字通り根こそぎ焼き払ってしまったのだ。半島の方々は「文化が無い」のではなく「文化を日本軍に破壊された」のだ。
 そこを間違えてはいけないし、意図的な擦り替えも絶対に許される事ではない

朝鮮の悲劇 (東洋文庫 222)

朝鮮の悲劇 (東洋文庫 222)

*1:断っておきますが「沈黙の艦隊」以降は大嫌いです