日々雑論[中東][アメリカ] うーん、ちとまだ勉強不足なんだけど

 中東問題に関しては、東洋近代史についてこれだけしつこくくっちゃべってるにも拘らず全く言及してこなかったのですが、一つにはくっちゃべるだけの自信と知識をまだ有していない、要するに半可打ちなのを自分でも嫌と言うほど判っていたので下手に駄弁ってもねえ、つーのがあったのは激しく本当の事なので否定しません。で、義兵闘争の関連資料がアマゾンからじぇんじぇん届かないのをこれ幸いと、ぼちぼち欧州第1次大戦の中東政策の教科書なんかを読みすすめている訳ですが、今の今までぐちゃぐちゃになっているのは元を正せば大英帝国の4枚舌外交が原因だった訳で。
 まーそんな事くらいちみっとでも中東問題を齧った方なら「ンナこたぁジョーシキじゃ!何を今更ぶーたれてんだオラ」と鉄拳が飛んできそうなもんですが、どーも今のメリケンをみるにつけ、大英帝国が第1次大戦後に嵌ったジレンマに無理矢理陥って、更に進んで首まで気持ちよく浸かってるなぁ、という印象をどーしても受けちゃう訳なんですよ。
 第1次大戦と言えば由緒ある「太陽の沈まぬ帝国」が「沈みはしないけど夕焼け小焼けまで来てしまってる帝国」状態となりたかが建国100年一寸の「ヤンキー」がドル札ばら撒いてのし上がるきっかけを作った画期的事件でもあります。言うまでも無くそれまでの「世界の警察」と言えば7つの海を支配する大英帝国であり、当時最大の陸軍国ロシアをどうやって封じ込めるか?という命題の下、様々な情報戦略や外交戦略を駆使したという事ですな。
 まあ、議会制民主主義と軍事パワーバランスで、例えば当時の海相チャーチルとエジプト組のキッチナー卿を中心とする派閥争いや、ロイド・ジョージチャーチルなんかの権力闘争なんかも見逃せないのですが、ぶっちゃけた話、対トルコ政策に対する誤りと迷走が全ての鍵だった、つー事に集約できるかと思います。
 で、話を今のメリケンに戻します。
 もともとの混乱の始まりは、アラブ反乱の指導者ファイサルをイラクの王として据え置いた事*1に端を発するのですが、どう素人目に見積もってもエジプトの指導者であるファイサルをイラクの王に持ってくる事自体無理がありすぎなのであって、あっけなくクーデターでひっくり返ります。で、それからなんだかんだとあってかの有名なサダム・フセイン政権となるのですが…
 なーんか似てませんかね? メリケンイラクに対して行ったその後の展開が
 どこがどう似てるかつーとですね、無理な外圧による強引な介入でそれまでの「まがりなりにも圧倒的な力でかろうじて収まっていた」状態を無理矢理かきまわされてしまったよ、つー事がです。
 第1次大戦後、トルコはそれまでの全植民地の権利を捨てる代りに独立を果たし、ケマル・パシャの下で近代化に成功したのは有名ですが別の話になるのでここでは譲るとして、トルコという強力な足枷を強引に解いた結果、全アラブ地域の紛争の種と、それに関する列強のパワーゲームを抱え込んでしまい、雪ダルマ式に増え続ける植民地維持費=軍事費に耐え切れなくなってパンクしかかる大英帝国と、フセインという強力な足枷を強引に解いた結果、全アラブ地域の紛争の種を抱え込んでしまい、おまけに石油利権まで抱き込まれ、雪ダルマ式に増え続ける軍維持費=軍事費にまさに悲鳴を上げている今のメリケンと、どーしても重なってしまうのですよ。
 結局大英帝国の場合は当時の最新鋭技術であり最も効率がよく、かつ一番維持が安く上がったと思われる空による連結網(飛行機ですね)と現地人による治安維持など色々な対策により急場をしのぎますが、これが後々尾を引いて東洋の悲劇の一原因となったのではないかと思います、が、これは今述べる事でもないし長くなるので後の宿題にしておきます。
 で、何がいいたいかと言うとですね…
 石油利権と軍需産業との奇妙なキメラが今まさに断末魔の悲鳴を上げているという事です。にも拘らず現ブッシュ政権イラク戦争という栄養剤をぶち込んだものだから、この奇妙なキメラは奇形のまま成長し、自らの体内に治癒不可能な癌を育ててしまったのではないか?と思う訳で。
 早い所食事療法なり何なりの治癒手段をとらないとメリケンという奇妙なキメラは栄養過多で死んでしまいますよ、と思っちゃう訳なんですよ。まあ、もーちっと勉強してからもう一度物言いしますが、今の実力ではこの程度…トホホです。

平和を破滅させた和平―中東問題の始まり(1914‐1922)〈上〉

平和を破滅させた和平―中東問題の始まり(1914‐1922)〈上〉

平和を破滅させた和平―中東問題の始まり(1914‐1922)〈下〉

平和を破滅させた和平―中東問題の始まり(1914‐1922)〈下〉

完全版 知恵の七柱〈1〉 (東洋文庫)

完全版 知恵の七柱〈1〉 (東洋文庫)

*1:勿論一番の事の発端は、フサイン・マクマホン協定サイクス・ピコ協定バルフォア宣言という三つの協定の上に、大英帝国の利益をどーやって確保するかと言うパズルを組立てようとした事にあるんですが