日々雑論 ウサンクサイケイ抄1月26日

ウサンクサイケイ抄1月26日

 二宮尊徳といえば、薪を背負って本を読みながら歩いている少年の姿が思い浮かぶ。日本人の特質だった、質実と勤勉の象徴だった。その尊徳が中国で注目されていると、「日経ビジネス」新年号が伝えていた。
 ▼世界同時不況の引き金となった金融危機は、市場経済の暴走がもたらしたものだ。特に中国に蔓延(まんえん)する拝金主義は、さまざまな社会のひずみをもたらしている。多くの学者が、「道徳の裏付けのない経済は罪悪に連なる」と書き残した尊徳の思想を、解決の糸口にしているというのだ。
 ▼結構なことだが、冷凍ギョーザ中毒事件をめぐる中国のでたらめぶりを知ったら、尊徳も肝をつぶすだろう。千葉県と兵庫県で、3家族10人が「メタミドホス」入りの冷凍ギョーザを食べて中毒症状を起こした事件が発覚したのは、1年前の今ごろだった。
 ▼日本の警察当局が、国内で混入された可能性は非常に低いという結論をすでに出しているのに、中国政府はいまだ公式には認めていない。それどころか、河北省にある製造元の国有企業「天洋食品」が、省政府の指示で売れ残ったギョーザを横流しして、新たな中毒事件を引き起こしていたというから、開いた口がふさがらない。
 ▼全国各地の農村復興に力を注いだ尊徳は、幕末の騒然とした時代を生きながら、政治に口を出すことはなかった。貧困にあえぐ農民が不平を爆発させることを何より恐れる中国政府にとって、都合のいい人物かもしれない。
 ▼しかし、尊徳は唯々諾々(いいだくだく)と、領主の命令に従ったわけではない。年貢に見合わない贅沢(ぜいたく)を見つけたときは、身長182センチ、体重94キロの巨体を揺さぶって怒りを示したという。為政者が、襟を正さなくては、尊徳の思想も生かしようがない。

 ウサンクサイケイ抄1月26日(改訂版) 
 二宮尊徳といえば、薪を背負って本を読みながら歩いている少年の姿が思い浮かぶ。弟子が「報徳記」なんて伝記をこさえて明治政府が持ち上げるまでは無名の百姓だった。日本の資本主義が揺らいだ時に農本主義に取り込まれた存在だった。あまり勉強してなかったから、漢籍、仏典から何も知識を得る事無くひたすら泥ばかり弄ってた人間だった。その尊徳が中国で注目されていると、「日経ビジネス」新年号が伝えていた。
 ▼世界同時不況の引き金となった金融危機は、経団連などに代表される大企業と、その圧力に唯々諾々と従って国民生活を顧みない日本政府の暴走がもたらしたものだ。特に産経新聞などがスポンサーとしている大企業に蔓延(まんえん)する拝金主義と従業員すら資材の一部としか見なさないカンバン主義は、さまざまな社会のひずみをもたらしている。多くの学者が、「道徳の裏付けのない経済は罪悪に連なる」と書き残した尊徳の思想を、解決の糸口にしている
 ▼結構なことだが、古古米中毒事件をめぐる日本政府の出鱈目ぶりや豊洲新市場移転に対する危険度無視の石原都知事の愚策、内部留保が腐るほどあるにも拘らず大企業の面々が安易に走る派遣斬りを知ったら、尊徳も肝をつぶすだろう。お菓子や冷凍食に混ぜられて「カドミウム」入りの古古米を食べてずっと知らなかった事件が発覚したのは、つい最近の事だった。
 ▼警察が混入された可能性は非常に高いという結論をすでに出しているのに、農林水産省や企業の動きは全く遅い。それどころか、ひたすら互いに責任回避をし、あまつさえその事には全く触れずにひたすら「中国の冷凍餃子」事件のみをこのようにコラムに表示する産経新聞の出鱈目振りには、あいた口が塞がらない。
 ▼全国各地の農村復興に力を注いだ尊徳は、幕末の騒然とした時代を生きながら、政治に口を出すことはなかったと言っているが、農業組合の雛形みたいなものを組織し、金貸しなんかもやっていた。この体制イデオロギーを利用するのは、貧困と差別社会にあえぐ農民が不平を爆発させ、票田として機能しなくなる事を何より恐れる自民党にとって、都合のいい人物かもしれない。 
 ▼しかし、尊徳は唯々諾々(いいだくだく)と、領主の命令に従ったわけではないと言ってもいるが、思想自体は体制イデオロギーだ。年貢に見合わない贅沢(ぜいたく)を見つけたときは、身長182センチ、体重94キロの巨体を揺さぶって怒りを示したといっても革命を起こしたとか決起したと言う話は全く聞かない。為政者が、襟を正そうが正すまいが、尊徳の思想なんか体制維持の為のイデオロギーでしかない。



アタシの基本は左翼面白主義なんだが、まあサンケイウォチャと見られてることでもあるし、それだけギャグネタ自爆ネタで楽しめるバカ新聞という事で(笑)