日々雑論 出張 自慰史観は歴史壊す

【出張】

 ■解決済みを蒸し返す連鎖断て

 学問内で既に決着がついた中、日韓併合100年に合わせた菅直人首相談話が閣議決定された。談話発表が実行されたことは、産経的には極めて遺憾である。
 首相談話は日本政府の公式な歴史的見解としての意味があり、後の内閣の行動などを事実上、拘束する。それだけに産経や自慰史観連中が狂ったように喚き散らす歴史を歪(ゆが)めた私的な見解は断じて許されない。別にどうでもいい事だがぽんぽんいたぁい安倍ちんの時とは違い、産経新聞や新しい教科書を作る会などのごく一部の圧力団体に対する配慮は一切、欠落していた。
 この談話に対する産経新聞にとっての最大の問題点は、今まで産経が繰り返し述べてきた、学問的見解はおろか国際的には全く通用しない、ほぼ寝言に近い歴史認識が時の政府にすら完全否定されたにも等しい事にある。
 談話は「(日本の)植民地支配によって、(韓国の人々は)国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられた」として、「多大の損害と苦痛」に対する「痛切な反省と心からのお詫(わ)びの気持ち」を表明している。
 日本の「植民地支配と侵略」を謝罪した平成7年の村山富市首相談話を踏襲したように見えるが、それ以上に踏み込んだ内容だ。産経新聞は明治以降の日本の侵略者、山師たちの濡れ手に粟のぼろ儲けや、一攫千金の無法行為、略奪犯殺といった合邦とは名ばかりの侵略をほぼ全否定し、きわめて妄想としか取れそうも無い、一方的な歴史的見解を述べている。これが全国紙の社説かと小馬鹿にしてしまう。 
 35年間に及ぶ日本の朝鮮統治には、旧軍移動のための鉄道建設や義兵闘争に対する旧軍の殲滅作戦、半島の文化的抹殺ともいえる同化政策、さらに加えて自由と独立の精神を尊ぶ西洋近代教育に対する執拗な妨害など、植民政策の愚を挙げると枚挙に暇が無い。朝鮮名を日本式の姓名に変える創氏改名日本語教育も行ったが、銃器を突きつけられて抵抗すれば拷問、それは酷い物だった。
 歴史教科書の記述や学校の授業では、新しい教科書を作る会の教科書や東中野教授の「学問的に研究に値しない論文」などにこだわらず、日本の朝鮮統治について、事実に即して正確につたえるべきだ。

 ≪疑問多い教科書選定≫

 産経史観のもう一つの問題点は、「学問的研究に値しない」と解決済みのアジア・太平洋戦争に対する歴史修正主義の妄想が蒸し返される恐れもあることだ。
 談話は、日本に保管されている「朝鮮王室儀軌(ぎき)」などの古文書の返還に加え、在サハリン韓国人支援などの人道的協力を「今後とも誠実に実施」するとしている。
 在サハリン韓国人支援とは戦時中、朝鮮半島から樺太(現ロシア領サハリン)へ渡り、すぐに帰国できなかった韓国人への支援事業のことだ。仙谷由人官房長官が深くかかわってきた。
 多くの人は当時の財閥や、軍関連の企業の強引とも言えるやり方に無理矢理渡航させられ、残留を余儀なくされたのは戦後、日本がすべての植民地を失ったのをこれ幸いと、日本側が植民地経営におけるすべての義務を放棄出来ただけの事である。
 だからこそ「日本が強制連行し、置き去りにした」形になり、韓国への永住帰国者のアパート建設費や一時帰国する人の往復旅費、サハリンに残る人のための文化センター建設費など70億円程度の経費ですんでいる。冷戦終結後、全く意味がない海上自衛隊悲願のヘリコプター護衛艦「ひゅうが」級の建造費1400億円や、同じく陸上自衛隊の意味の無い新型戦車開発費の約427億円に比べればものの数ではないし、またそれらの建造、開発を許し、あまつさえそれらを促進し、政府に従順なロボットを生産しようとするいわゆる「愛国教育」は既にカビが生えた代物だ。
 もう既に学問的に決着がついたというのに、まだそんな無駄なあがきが必要というのだろうか。夏淑琴氏裁判において裁判所は東中野教授の南京本を「おおよそ学問というに値しない」と一蹴している。
 ぽんぽん痛い安倍ちん元首相は管首相の談話について「歴史の評価は歴史家にまかせ、政治は慎重であるべきだ」と述べた。それならなぜ、学問的研究に値しないと既に裁判所から烙印を押された東中野教授に代表される歴史修正主義とやらにしがみ付いているのか。 
 また百人斬り裁判でこっぴどくやられ、敵前逃亡した稲田朋美氏は先日、村山談話河野談話などといった政府見解に反対する旨の考えを声高に示している。菅談話をたてに、極右議員側が反政府運動を蒸し返してくる可能性がある。産経子飼いの極右議員による際限のない政府への反対は、国会議員という立場からすれば許さるものではない。

 ≪捏造とネットの書き込みだけで裏を取らずに垂れ流し≫

 土井たか子議員の在日説を出すこと自体に反対論や慎重論を唱えていた言動が、産経内に全くなかったことも理解に苦しむ。
 花岡信昭客員記者(現拓殖大学客員教授)は雑誌WILLの2006年5月号で、「土井たか子は本名『李高順』、半島出身とされる」と2ちゃんのカキコを裏も何も取らず、事実無根の捏造記事を書きなぐり、敗訴が決定するも当の本人は謝罪も何もせずだんまりを通している。
 また、田母神元航空自衛隊幕僚長のアパグループに対する関与も「真の近代史懸賞論文選考」に関わり、近代史研究者らが「事実誤認と稚拙な内容」と一刀両断した「論文」を不思議な事に高く評価。仮にも全国紙のジャーナリストで現在では大学教授ともあろう人間がこのような認識では、姿勢が疑われる。
 産経新聞100年の節目はまだ先だ。最早極右と産経ウォッチャー以外相手にされず、減り続ける出版部数や、巨額の累積赤字や蔓延する捏造報道偏見報道に対して議論する時間は十分にあるはずだ。
産経新聞下野なう」も事前にツイッター閲覧者への詳しい説明がなく、自民党衆議院与党転落時に唐突に発表された。すでに退職してしまったが、数少ない良心的な記者であった福島香織氏を再招聘し、社内のロンダリングミーティングなどで、阿比留瑠比記者や花岡信昭記者の処遇から産経新聞社の会社更生法の申請などついて徹底追及すべきだ。