日々雑論 やっぱ海外からの目はしっかりしてるね

 最近鬱陶しい話題が多すぎてネタの採取には困らなかったのですが、ちと落ち着いたのでまたぞろぼちぼちテンションを戻していこうかと思ってます。
 で、断っておきますがアタシャ「腐れ左翼面白主義者」の生き残りであって真面目なリベラルの発想や、難しい事をしかめっ面して考えるのは一寸堅苦しくてアチキ自身が疲れちゃうのでよく脱線や逸脱、不必要なギャグや意味の無い暴走はしょっちゅうしてしまいますが申し訳ありませんけどその辺のところも大目に見てやってください。
 それはさておき
 アマゾンにお頼み申し上げている本がなかなか届かないので痺れを切らして別の本を注文したら2日で来てしまったのでびっくりしたのだけど、また一気に読み終えてしまって考えさせられる事しきりだったのでそれも含めて色々と雑感を。
 アーソン・グレブスト著「悲劇の朝鮮 −スウェーデンジャーナリストが目撃した李朝最後の真実−」読了
 内容は1904年日露戦争時の半島での民俗観察、半島の状態のルポなのだが、やはり感心するのが「第3者からの鋭い視点」というのがいかに重要か、というのが第一印象だった訳だ。幾ら上辺を取り繕って豪華に見せたとしても、鋭い嗅覚を持つジャーナリストなら本質を直ぐに見抜いてしまう。
 近代東洋史を調べたり口出しするに当たって、何故日中韓などの当事国の当事者のものからあまり拾わず、第3者である海外のジャーナリズム等から拾ってくるのかと言うと、まあ、視点がやっぱり違うので凄く面白いと言うのもあるというよりそれが一番大きな理由なんだけど、当事者及び当事国とはやはり一歩立ち居地が違うため、より広い視点で物が見れるだろうと思うからであり、実際気がつく点も結構多いのだけれど、立場や視点が異なるとはいえやはり目に付くのが当時、百歩譲って「植民地経営」という言葉が成立すると仮定した上でも極まって浮き出る日本の「植民地経営」としての異常さである訳だ。これはイザベラ・バードだろうがF・A・マッケンジーだろうが今回読了したアーソン・グレブストだろうが表現の差こそあれども避けて通ることが出来ない。

 (略)しかしながら、日本の狙いとするところが、韓国の全面的併合とその民族性の完全抹殺以外の何者でもないことが次第にはっきりしてきた。当時韓国にいた最も有力な日本人の一人は、この事実を率直に私に打ち明けた。彼は私にこう語った。
 「おことわりしておきますが、これは私の公式見解ではありませんよ。けれども、もしあなたが、日本の政策の結果として何がもたらされるかを個人として私に尋ねるとすれば、私はただ一つの結果を想像しているだけである、と言いたい。それには何代もかかるでしょう。だがきっとそうなるに相違ない。韓国は日本に併合されるでしょう。彼ら韓国人は我々の言葉を話し、我々と同じように生活し、我々の完全な一部分となるでしょう。いったい植民地支配には二つの型があるだけです。一つは、その土地の民衆を外国人として統治するもので、之は貴方達イギリス人がインドで行っている方のものです。従ってあなたたちのインド帝国は長続きすることは出来ない。インドはきっと貴方達の支配を脱するに違いない。第二の道は民衆を同化してしまうことです。これが我々日本のとろうとしている道です。われわれは彼らに日本語を教え、日本の制度を樹立し、彼らをわれわれと一つのものにしようとしているのです」と。
 これが日本政府のいわゆる「慈悲深い」政策なのである。きわめて普通一般に考えられているなまのままの考え方は、韓国全土を併合するという事であってその前作業を日本人の手中に収め、韓国人をして、勝ち誇った征服者としての日本人のためにきこりや水汲み人夫の様に働く、そういう地位に貶めるという事である。(略)

 F・A・マッケンジー「朝鮮の悲劇」第12章 伊藤統監の統治より抜粋したが、改めて読み直し、その発想の気持ち悪さに頭がぐらぐらしてきた。これを民族抹消政策、ホロコーストと言わずして何というのかと思ってしまうのだが、アーソン・グレブスト著によるこのルポも、実際都市部等で日本がどのような統治を行っていたのかを知る手段として非常に興味深い。また、そしてそれが頭を抱える理由にもなるんだけど。
 一進会なんかについてもまるまる1章を割き、完全に日本の半島侵略の手先として動いている様とかが詳細且つ序実に記されていて興味深いのだが、F・A・マッケンジーのルポが主に半島での義兵闘争を中心に記述されていたのに対し、アーソン・グレブストの「悲劇の朝鮮」は都市部での半島民俗及び日本人の蛮行や対応を窺い知るものとして貴重なものだ。
 で、これから暫くアーソン・グレブスト著「悲劇の朝鮮」とF・A・マッケンジー「朝鮮の悲劇」を読み比べながら近代東洋史と半島における日本の問題について考えていこうと思っている。まあ、ただの思考実験、平たく言えば「ただの道楽」ともとれるのだけどね(笑)
 内田良平なんかの日韓合併論なんかにも今ひとつ気味が悪いと言うか胡散臭いというかそういう感じを拭えないのはこの「同化政策」の気持ち悪さにあるんだけど、まあ、それも含めておいおい見ていきたいと思っている。続くかどうかはわかんないけどね(笑)

朝鮮の悲劇 (東洋文庫 222)

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悲劇の朝鮮―スウェーデン人ジャーナリストが目撃した李朝最期の真実

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